声優の養成所などで、基礎期に必ずといっていいほど練習させられるのが、外郎売り。
早口言葉のイメージが強い方も多いかもしれませんが、外郎売りは滑舌がしっかりするまでは、早口で練習しなくても大丈夫です。
むしろ、初心者はきちんと一音一音を発音するために、ゆっくり練習した方が良いです。
滑舌や表現力など、練習する要素がとてもたくさん詰まっているので、外郎売りだけで半年や一年かけて練習をさせる講師の方もいるかもしれません。
そんな演技初心者の皆さんは、外郎売り以外の練習にも興味があるのではないでしょうか。もちろん外郎売り以外にも、声優の台詞の練習方法はたくさん存在します。
今回は、外郎売り以外の練習方法をご紹介していきます。日々の練習の参考になれば幸いです。
1.初見の文章を読む
今どきは、新聞を取っている人も減ってきたかもしれませんが、新聞を毎日取っているという人は、初見のときに文章を口に出して読んでみましょう。
ナレーターの人などは、こうやって毎日初見の文章を読めるように、新聞を口に出して読む練習をしている人も多いようです。
実際やってみれば分かるのですが、初見の文章を噛まずに、内容も意味が分かるように表現しながら口に出して読むという行為は、余程練習を繰り返さないと出来る芸当ではありません。
しかし、声優の現場は、台本を渡されてから収録当日まで、ろくに時間を与えられないこともよくあります。当日に原稿を渡されて、「これを読んでください」なんてことすらあるのです。
ですから、初見だったり、何度か目を通しただけの文章を、きちんとした発音で表現するというのは、声優として大切な技術なのです。新聞でなくても構いませんので、初めて目を通す文章を口に出して読む練習は、是非しておくことをおすすめします。
2.文章を「アイウエオ」に変換して読む
今度は、初見の文章でなくても構わないのですが、文章を全て母音に変換して読んでみる練習をしてみましょう。
例えば、外郎売りの出だしの「拙者、親方と申すは」ならば、「エッア、オアアアオオウウア」というように読みます。これは『母音法』という練習方法で、劇団四季が取り入れていることで有名です。
ラムちゃんの声でおなじみ、声優の平野文さんも、とあるテレビ番組に出演されていたときに母音法をおすすめしていましたので、声優にとっても、とても重要な練習方法と言えますね。
母音法で練習することで、口の開け方をとても意識するようになりますので、発音がとても明瞭になります。
普段の話し方や、台詞の練習をしているときに「何を言ってるのか聞き取りにくいよ」なんて言われてしまう人は、話すスピードが速く、口があまり開いていない可能性がありますので、母音を意識して、ゆっくり話すことを心掛けましょう。
3.エチュード(即興芝居)にも挑戦してみる
さて、文章を読むばかりが、声優の台詞の練習という訳ではありません。
声優は、あくまで俳優という大きな枠組みの中の一つに過ぎませんから、台本が無い即興芝居にも当然慣れておく必要があります。
台本が無いからなのか、エチュードに苦手意識を持つ人はとても多いのですが、むしろ芝居の醍醐味は、台本に無い言葉のキャッチボールから生まれる思いもよらない表現だったりするので、是非ともエチュードを楽しんで出来るような役者を目指しましょう。
4.エチュードをするための設定を考えよう
エチュードは、一人でも二人以上でも出来るのですが、何人で演じる場合でも、エチュードを始める前に、まずそれぞれの設定を考えてみましょう。
演じる人は何歳で、どんな立場で、どんな気持ちなのか。そして演じる場所は、一体どこなのか。ざっくりで構いませんので、演じる前に決めてみましょう。
演じているうちに、設定がどんどん細かく具体化していくこともあります。演じている最中は、とにかく設定だけは頭に入れておいて、あとは失敗を恐れずに流れに身を任せましょう。
上手く演じようと思わなくて大丈夫ですので、設定した人物になりきって演じることを意識しましょう。
ただ、オーディションの審査などのときは、時間制限が設けられていることもあるかと思いますので、そういうときは全体の話の流れを事前に自分でイメージして、時間内にオチをつけられるように演じられる方が印象が良いです。
まとめ
今回ご紹介した練習方法は、初心者には少し難易度が高い方法かもしれません。しかし、どんな練習方法も、コツコツ続けることが大切です。続けると次第に慣れてきて、身体に感覚が染み付いてきます。
世の中には、あまり意識して練習しなくても、最初から出来る天才型の人も存在しますが、本当にほんの一握りです。
「自分は出来ている!」と過信しないで、基礎の外郎売りから応用の練習方法まで、謙虚に継続して練習してみましょう。