今どきは声優たるもの、歌の一つや二つ歌えなければ生き残っていけない、という考えの人も多く、自主的にボイストレーニングに通ったりしている人もいれば、中には声優になるためにわざわざ音楽大学にまで進学する人も増えてきました。
筆者は声優を目指し始めたのが遅い方でしたので、まさか声優になるために音楽大学へ進学している人が、世の中にこんなにいるとは思ってもいませんでした。
声優業界では、歌唱力がもはや声優という枠を超えて、歌手といってもいいくらいの人がわんさか出てきていて、正直なところ「おいおい勘弁してくれよ」と思うところもあります…
いや、声優仲間や歌手業界の方々の中にも、同じ思いを持っている人は結構いるのではないかと個人的には思うのですが…。
声優に歌唱力は必要なの?
ではやはり、声優を目指すのであれば、歌唱力は磨いておかなければならないでしょうか。
筆者の個人的見解ですが「歌唱力は磨いておくに越したことはないが、歌手並の歌唱力は必須ではない」です。
そもそも声優とは、大きなくくりで見れば俳優です。つまりお芝居をすることが本業なのです。
お芝居以外の特技に関しては、歌でもダンスでも、あらゆることがその人のアドバンテージとなります。
お芝居に全く結びつかないようなことでも構いません。アロマにとても詳しかったり、ペットを飼っていたり、はたまた声優以外のお仕事もしている人などは、その知識を役作りに生かしたり、ラジオ番組やトークイベントに呼ばれたときなどは話のネタにもなります。
何の特技がいつどう役に立つかは分からないのです。ですから、普段からとにかく色んなことに挑戦しておくことをおすすめします。
現場で活躍している声優さん達って、何故か多趣味の人が多くて、しかもその趣味が特技と呼べるほどレベルが高い人が多いのです。
きっと自分の好きなことには一生懸命になれるから、声優の世界でもプロとして活躍できているのでしょうね。
歌唱力を磨くなら、とことん磨く
さて、話を歌唱力に戻しますが、別に「不必要である」とは言っていません。
たとえば歌が上手いという設定キャラクターのオーディションで、その役に受かった声優は必ずキャラクターソングを出さなければならないという場合、お芝居が役にピッタリだという声優が二人いたならば、やはり最終的には歌唱力がある声優が採用される確率が高いです。
キャラクターソングはアニメのOPやEDに使われたり、またゲームのイメージソングに使われたりと、作品の関連商品の売り上げに関わることが多いです。ゆくゆくはカラオケ配信をしたり、ライブイベントも展開したいと考えているかもしれません。
そうなると、歌唱力があってパフォーマンス能力がある人が、できれば望ましいと思うのは仕方ないですよね。
声優に限らず、芸能界というのはチャンスが回ってきたときに、いかに力を発揮できるよう準備をしておくかが重要になってきますから、最終選考の二人まで残ったのに、歌唱力で落とされていたとしたらとても悔しいですよね。
ですから、そういったチャンスが来たときに、がっちり掴みたいという人は、歌唱力を磨いておいてもいいかもしれませんね。
ただ、ここでいう歌唱力といっても、今どきはかなりのレベルが求められます。中途半端に歌唱力を磨いた程度では、歌を一番の特技としている人たちには勝てません。磨くのであれば、とことん磨いてください。
それには時間とお金はどうしてもかかります。そういったことも覚悟の上で、お芝居を磨きながら、同時に歌唱力も磨いてみてくださいね。
歌唱力より大切なもの
ここまで記事を読んだ方は「なんだ、やっぱり歌唱力って必要なんじゃん!」と思ったことでしょう。でも筆者は、必須とまでは思わないのです。
なぜなら、キャラクターソングとセット売りで有名な作品のオーディションに、歌が苦手でも合格した人を知っているからです。
最初は何故その子が選ばれたのかとても不思議でした。しかしその人に話を聞いてみると、なんと歌は編集しているとのこと。まあ、これも今どきでは珍しいことではないですよね。
歌手でも実際に販売されている作品の歌唱力と、生放送の歌番組に出て歌ったときの歌唱力が全然違ったりして「アレ?」と思うこともありますものね…きっと手直しされているんでしょうね…。
それは置いておいて、要はキャラクターソングが必須の役でも、歌唱力は必要とされないケースもあるのだということです。やはり手直しできる歌なんかよりも、お芝居が魅力的な人ならば「あ、この子使いたいな」と思ってもらえるんですね。
私はこのケースを知って、やはり声優に一番大切なのはお芝居なのだ、と改めて気付かされました。
まとめ
活躍されている声優さん達を見ていると、歌もダンスも何でも出来なければいけないんだ、と囚われがちですが、まずはやはりお芝居が第一ということには変わりありません。
そのうえでアドバイスするのであれば、個人的な意見ですが「声優は歌唱力も必要だからトレーニングする」ではなく「私は歌が好きだからトレーニングする」「歌が苦手だけど好きになりたいからトレーニングする」なら良いのではないかと思います。
「声優だからやる」という固定観念に縛られるタイプは、最終的には「好きだからやる」には勝てないのではないでしょうか。