横隔膜、という名前からして、肺の下の辺りに膜が張ってるのかな?なんて思う方もいるかもしれませんが、横隔膜は立派な筋肉のうちの一つです。
焼肉のハラミは牛の横隔膜、という知識なら知っている方も多いかもしれません。それを思い出すと、確かにハラミは膜ではなく、ちゃんとしたお肉ですよね。
では、横隔膜がどんな筋肉なのかと言うと、ひとことで言えば「呼吸を助けるための筋肉」です。
横隔膜を使っていないときには、横隔膜は上の方に上がっていて、胸のスペースはどんどん狭くなっていきます。そのため肺は自然としぼんでいく、つまり、息を吐いている状態です。
しかし、横隔膜に力が入ってググッと下の方に下がっていくと、胸のスペースはどんどん広がって、そこに空気が入り込み、息がたくさん吸えるのです。
1.横隔膜は鍛えられるのか
横隔膜は膜ではなく筋肉である、ということは、もちろん筋トレをすることによって鍛えることができます。
そもそも、普段から横隔膜は呼吸のときにずっと使いっぱなしなのだから、それだけでも十分鍛えられているのでは?とも思いますよね。実は横隔膜は普段の呼吸だけでは、60~70%くらいの実力しか発揮していないのです。
もちろん、日常生活を送る上では、それくらいの稼働率でも全く問題はないのですが、きちんとした発声をしたいという人にとっては、それだけしか横隔膜を使わないのはもったいないと言えます。
言い換えれば、普段あまり横隔膜を活用していないのであれば、鍛えればもっと力強い呼吸を使いこなすことも出来るだけの伸びしろもあるということ。
発声を安定させたいという方は、横隔膜の筋トレは是非挑戦してみましょう。
2.横隔膜の筋トレ
それでは、とても簡単な横隔膜の筋トレを一つご紹介しましょう。
まず仰向けに寝て、膝を立てます。そしてお腹に何か重たいものを乗せて、それをお腹で持ち上げるように呼吸をするだけ。無理なくトレーニング出来るのであれば、お腹に乗せるものの重さは自分の好みで構いません。
慣れないうちは無理はせずに、徐々に重さを増していってみてください。
たとえば、最初は500ミリリットル入りのペットボトル、それに慣れたら次は1リットル、最終的には2リットル、という風に段階を上げていってみると良いでしょう。
分厚い辞書でも良いですし、漫画本をたくさん持っている人であれば、単行本を乗せる冊数をどんどん増やしていくのも良いかもしれません。
これを地道に続けているだけで、横隔膜は確実に鍛えられていきます。
3.胸式呼吸は横隔膜を使わない
さて、横隔膜の役割は、呼吸を手助けすることだと述べました。
横隔膜をググッと下げることにより、肺が膨らむスペースが広がって、たくさん息が吸える…という文面だけ見ると「アレ?胸のスペースを広げて息を吸うんだから、それって胸式呼吸じゃないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、それは違います。
胸式呼吸は横隔膜を利用するというよりも、肩を上げて胸のスペースを広げて、肺を横に広げて息をたくさん吸おうとしているので、実はあまり横隔膜は使っていないのです。
横隔膜も怠けてしまっているうえに、肩や首に力が入ってしまっているので、胸式呼吸では良い発声ができないと言われています。
4.横隔膜を使った腹式呼吸
一方、腹式呼吸がきちんと出来ている人は、横隔膜はググッと下に下がっています。腹式呼吸をするとお腹が膨らむのですが、本当はお腹が膨らんでいる訳ではないのです。
胸式呼吸では肺は横に広がると述べましたが、腹式呼吸では横隔膜が下に下がるおかげで、肺は横ではなく縦に広がることが出来ます。つまり、腹式呼吸ではお腹が膨らんでいるのではなく、実は肺の下の方がどんどん膨らんでいるのです。
良い発声は、下半身の支えはしっかりキープしたまま、なおかつ上半身はリラックスしていないといけません。
腹式呼吸がきちんとマスター出来れば、首や肩に力を入れなくてもたくさん息が吸えるので、上半身がリラックスしたまま伸び伸びとした発声が出来るのです。
まとめ
横隔膜は外から見えないので、鍛えようとしても毎日の成果がなかなか実感しにくいかもしれません。しかし、安定した発声には、横隔膜を意識して利用することが欠かせません。
毎日少しずつでも良いので、是非継続して鍛えてみてください。すぐには成果は出ないかもしれませんが、長期的にトレーニングすることで、とても楽に声が出るようになったり、声が力強くなったなと思える瞬間が必ず来ます。