ピアノで合唱の伴奏を弾くときは、ソロで弾くときとは全く違うところに注意をする必要があります。
ピアノの独奏は、弾く人が主役であり、テンポを決めたり表現をしたりと自由にできますが、伴奏は歌に合わせるための引き立て役になる必要があります。
伴奏はとても重要な役割であり、リズムなどを間違えてしまうと、全体を崩してしまうほど大きな影響を与えてしまいます。
では、伴奏をするときに注意すべきところや、うまく弾くためのコツを見ていきましょう。
1.歌う人の立場になって弾く
楽譜通り完璧に弾けることはもちろん大切ですが、伴奏となると、歌う人たちの都合を考えてあげなくてはなりません。
歌う人は、ブレスをとり、そのブレスで音楽を奏でます、例えば、楽譜上に、ritardando(リタルダンド)と書いてあるからゆっくりしすぎてしまうと、息が続かず音楽性が崩れてしまいます。
常に歌う人の気持ちを考えておいて、表現をする必要があります。
また、楽語にとらわれすぎて重たく弾きすぎてしまい、かつ歌よりも後手後手で弾いてしまうと、歌う人にとっては後ろから引っ張られているような気がして、声が前に飛びにくくなります。
息がきれいに循環するように、前向きに弾いてあげる必要があります。とはいっても、テンポを上げるのではなく、テンポ感に対して忠実に、瞬発力を持って弾くようにしましょう。
2.楽譜ばかりにとらわれないようにする
合唱の伴奏は、歌う人と合わせて初めて成り立ちます。楽譜ばかりにとらわれてしまって、歌っている人や、指揮者に気配りをできないのはよくありません。
常に、休符の後の音などは歌い手のブレスを感じること、そして指揮者のタイミングを注意深く見ることが必要です。
そのため、楽譜を見すぎてしまうと、合図を逃してしまいます。また、場所によって、歌い手や指揮者がどのようにしたいか、楽譜にない要求をしてくることがあります。
その場合は、臨機応変に対応をして、楽譜に忘れないようにメモをしないといけません。
合唱の練習のとき、ピアノ伴奏者に直接「このように弾いて」という指示を与える指揮者はあまりいません。
歌い手に指揮者が指示をしていることを聞いて、ピアノの弾き方をどうするべきか、音を持って答えるのが伴奏者の役割といえます。
3.楽譜をしっかり理解しておく必要がある
伴奏の部分だけでなく、それぞれのソプラノ、アルト、テノール、バスそれぞれのパートが歌っている楽譜も、弾けるようにしておかなくてはなりません。
合唱練習のときに、全員で歌うこともありますが、もちろんパート別の練習もします。そのとき、歌い手が取りにくい音などが出てきたら、ピアノで弾いて聞かせてあげたり、歌と一緒にメロディーのみを弾いてあげたりします。
そのときに、パート別の楽譜を理解しておくことが必要になってきます。
また、パートの歌い始めや休符がどこなのかを熟知しておかないと、合唱練習の伴奏者が何をしたら良いのか、追いつかなくなってしまい、伴奏者として練習に参加している意味がなくなってしまいます。
まとめ
ヨーロッパでは、オペラ歌手に対して、オペラ公演前の練習をするために専属の伴奏者がおり、この伴奏者が楽譜の構成などオペラ全体の流れを、歌手に伝えるという大切な役割をします。
また、これらの専属伴奏者は、歌手にブレスのとる場所なども指示することもあります。こうするには、伴奏者はピアノの技術を磨きながら、自ら声楽を勉強する必要があるのです。
もちろんピアニストなので、歌い手ほど一生懸命に練習を積み重ねる訳ではありません。
しかし、自ら声楽のレッスンを行うことで、歌い手にとって何がしにくいのか、ブレスを感じる方法、どこを歌い手が聞かせたいのかなど、ピアノを弾いているだけでは感じにくいことを覚えることができます。
また、ピアノを弾きながら、歌い手と同じようにブレスをすることで、伴奏がずれることも少なくなります。
ピアニストは、手が演奏するツールなので、息を考えなくても演奏できますが、フルートなどの管楽器を初め、一見関係がなさそうなヴァイオリンも、フレーズの長さを常に考えながら演奏します。
ブレスをすることを覚えて演奏することは、合唱だけでなく、合奏にはかかせません。