吹奏楽部は文化系の部活ですが、実際に部活動を経験した人からすると体育会系と変わらないほどハードな部活です。
クラリネットやフルートを吹くためには肺活量が必要になるため体力を消耗し、コントラバスなど大きな楽器を弾くためには楽器を支え続ける持久力が必要になるのです。
こういったハードな部活であるため、学校によっては運動部が参加する合宿に同行することもあるほどで、部員は体育の成績が良いことも珍しくありません。
体育会系の部活と同じように吹奏楽部にも目標とする大会があり、それがコンクールです。
コンクールは全ての参加校が演奏を終えると上から順に金賞、銀賞、銅賞に分けられ、金賞のみがより上位の大会に出場することが可能になります。
全ての吹奏楽部が目標にするのは、全国大会での金賞なのです。
その目標に向けて、毎日厳しい練習が行われています。
全国大会を目指している学校の練習は一年を通じてほぼ休みがありません。
インターハイ出場を目指す運動部と同じようにお盆の数日と年末年始を除いて平日と休日を問わず朝9時頃から音楽室に集まり、夜6時頃まで練習をしているのです。
楽器の演奏に疎い人の中にはそれほどまでの練習量が必要なのかと考える人もいますが、数多くの楽器の音を揃え、ハーモニーを奏でるためにはこれでも練習時間が足りない位なのです。
私も高校時代に吹奏楽部に所属し、日々練習に明け暮れていました。
公立高校ではあるものの吹奏楽部は長年にわたって良い成績を残していて、県内でも有数の高校として知られていました。
私も当然そのことを知っていて、全国大会に出たいという期待を胸に入部したのです。
顧問の先生は指導実績を評価されて転勤することなく同じ高校で指導に当たっていました。
授業を受けているときは穏やかで生徒の冗談にも付き合ってくれる気の良い先生なのですが、部活動になると一変します。
音の乱れがあると演奏を止めさせてミスをしたパートを叱り、上手く演奏できるようになるまで何度でも同じ部分を繰り返させるのです。
しかもその指摘は的確なので生徒は文句を言うことも出来ません。
高校入学前はこれほどハードな日々になるとは思っていませんでしたが、何の目標も持たずに漠然とした高校生活を過ごすよりはマシだと自分に言い聞かせ、休むことなく部活に出続けていました。
とはいえ、なかには途中でドロップアウトしてしまう生徒もいて、そういった仲間の姿を見るとその人の分まで頑張ろうという気持ちになれました。
仲間との結束やチームワークというと運動部を連想しがちですが、文化部に分類されていても仲間の大切さは変わらないのです。
私が通っていた学校の所在地におけるコンクールは、地区大会から始まって金賞をとって代表に選ばれれば地方大会に進出し、その大会で金賞になると全国大会に出場できるという規定になっていました。
全国大会は高校だけでなく大学や社会人も出場してくるので、非常にレベルが高いのです。
しかし、先輩たちは過去に何度か全国大会に進出したことがありました。
当然、私たちの世代も全国大会出場を目標に掲げて練習を積んできたのです。
地区大会では金賞をとれましたが、順位は3位でした。複数の高校が地方大会に進出できるので問題ありませんが、1位が妥当だと考えていたため予想外の結果でした。
そのため地方大会までの練習は苛烈さを増し、帰宅してから翌朝起きるまでの記憶がないこともありました。
その練習のおかげで、地方大会では金賞はもちろん1位を獲得して全国大会である全日本吹奏楽コンクールに進出することが出来たのです。
地元の新聞でも取り上げられて、これまでの努力が報われた気持ちになりました。
全国大会では残念ながら銅賞でしたが、高校生活を賭けただけの価値がある部活動でした。