吹奏楽のコンサートに行けばたくさんの名曲に出会えます。
多くの人が学校の授業でも習いメロディに親しみを持つのは、グスターヴ・ホルストの木星です。
2003年に日本の歌手が歌詞をつけて歌ったことで、Jポップとして触れ合った人も多く大ヒットしました。
グスターヴ・ホルストは7つの楽章で構成される組曲を作りました。
それぞれの楽章は西洋占星術に基づいた惑星の名前が当てはめられており、木星もその1つです。
彼自身は土星を好んでいましたが、世界的に高い評価を得たのは木星の第二節で今でも様々なアレンジを加えて演奏されています。
天文学的な木星ではなく西洋占星術で位置づけられた木星を表現しています。
西洋占星術では木星はローマ神話に登場するジュピターのことであり、主神として堂々たる出で立ちですが同時に快楽の象徴でもあります。
他の楽章と比べる演奏のスケールが大きく、国民が祭りに賑わっているような情景が浮かばれます。
通常の編成はホルンは4本ですが、この曲は6本と増えることからも雄大であることが分かります。
有名な主旋律に沿ってトランペットとトロンボーン、チューバの金管楽器が和音でハーモニーを奏でる部分は、神秘的で木星の快楽をもたらすというイメージをしっかり表現します。
次に「シング・シング・シング」はスウィング・ジャズの名曲であり、吹奏楽でもよく演奏されます。
作曲者はジャズクラリネット奏者として有名なベニー・グッドマンで、最初に演奏されたのは1938年のことでした。
音楽の殿堂カーネギー・ホールで演奏すると、ベニー・グッドマン楽団の代表的な曲となり、他のメジャーなバンドがカバーし始め現在の地位を獲得しました。
吹奏楽向けの編曲は1981年に登場し、編曲を行ったのは吹奏楽界のレジェンドとして名高い岩井直溥です。
トロンボーンとトランペットの掛け合いから始まり、サックスによるメロディという軽快なリズムはクラシック奏法へのこだわりを捨てて自由な表現を追求することで成立します。
クラシックをあまり知らない人でも楽しめるポップスです。
この曲の一番の見せ場はクラリネットのソロで、ジャズクラリネットでは定番のアルティッシモ音域が観客を沸かせます。
アルティッシモ音域とは超低音域ともいって、普段のクラシックではあまり見かけません。
シング・シング・シングは各楽器のソリストがありますが、クラリネットは演奏の終盤で回ってきます。
ここで失敗すると全体が締まらないので、クラリネット奏者は緊張する楽曲です。
キーンと非常に高い音が美しく出た時は、オーケストラの一体感が強まります。
そして観客を感動させ時には涙を流させる名曲は、福田洋介が作曲したさくらのうたです。
この曲は2012年度の吹奏楽コンクールで課題曲にもなっており、メロディが親しみやすいです。
課題曲にしてはテンポがゆったりして繊細なハーモニーが求められるため、演奏難易度が高くこの曲を選ぶ学校は少なかったといわれています。
今では基礎力の高いオーケストラが演奏する定番となっているので、さくらのうたが曲目に入っているならばそのオーケストラは期待して良いです。
桜を見て愛で方や感じ方が異なるように、演奏者は自由にさくらのうたを表現し自分たちだけの音楽を作り上げています。
ピッコロのソロから始まりトランペットのソロが続きますが、トランペットの柔らかく優しい音色が美しさと儚さを併せ持つ桜にピッタリです。
木管楽器がメインでメロディとハーモニーを活かすためにも、金管楽器は優しい音色を心がけて演奏されます。
力任せの演奏は通用せずテクニックが求められるため、完成したものは観客の心を揺さぶります。